【ブル爺の自律神経入門】不調は突然起きる?|自律神経パワーという考え方

第2回:ブル爺、“未然に察する力”に目覚める⁉

~ 自律神経がくれるサインを見逃すな ~
「ん?なんだか今日は、朝から胸のあたりがモヤッとするんだよな……。雨のせいか、はたまた昨夜の寝酒のせいか? いや、まてよ。こういうのが“前兆”ってヤツかもしれんぞ……」
──ごめんなすって!ブル爺です。
この前、京大の森谷博士に“自律神経”ってやつを教わってからというもの、ワシの中で、何かがカチッと噛み合った気がしましてな。やっぱり人生、学びは止めちゃいけねぇ。
というわけで、またしてもあの筋肉博士に聞いてきました。「不調のサイン、どうやって気づくか?」って話をね。

「博士、今回は、“なんとなく不調”に、科学の光を当ててほしいんですわ。 まさか、“歳のせい”で済ませる気じゃあ……」

「ブルさん、いい質問ですね。実は、自律神経というのは“バランス”だけじゃ語れないんですよ」

「なんと!? このブル様が長年信じてきた“バランス論”が覆るとは……!」

「大事なのは“自律神経パワー”。いわば、その神経たちがどれだけ力強く働いているか、という元気の度合いなんです。交感神経(アクセル)と副交感神経(ブレーキ)のバランスが良く見えても、両方ともかすかにしか動いてない、ということもありますからね」

「つまり、バランスが良くても、そもそもエンジンが回ってない場合がある。そりゃ不調にもなるわけだ……!」

「そうなんです。だから、まずはどれだけのパワーが出ているかを測る必要があります。
しかも自律神経は、日によっても時間によっても変わります。前回にもお教えしたとおり、それを“日内変動”というんですが、朝と夜では自律神経の働きも違うんです。
ブルさん、“ゴールデンスタンダード”って言葉をご存知ですか?」

「……それは辞典の話ですかい?」

「違います(笑)。自分にとって一番落ち着いている状態、つまり、安静時の自律神経の基準値のことです。これを知っておくことで、日々の体調変化にも気づきやすくなります」

「なるほどな。毎朝、ベッドの上でスマホ使って、自律神経を測る──そんな習慣が、自分の“調子の波”を見える化してくれるってわけか」

「その通り。たとえば、最近イライラするという時に測ってみて、交感神経が高ぶっていると気づける。だるい時に測れば、副交感神経が落ちているのがわかる。そうやって不調の“予兆”を見つけるんです」

「なるほど、スマホで測れる時代か……ワシの若い頃は、自律神経なんて、気合で整えるもんだと思ってたんですがねぇ……」
というわけで、今日の学び。
「不調ってのは、いきなりやってくるもんじゃない。気づく耳さえ持てば、自律神経がそっと教えてくれる──まるで古い友人がくれる手紙みたいにね」
……なーんて言ってるうちに、ワシの鰻が冷めちまったじゃないか!
「お姉ちゃん、白焼きもうひとつ頼むよ。今日は取材が絶好調だったからな!」
ほんと、健康のヒントは、鰻と博士と、ちょっとの気づき、ってとこかね──。
< プロフィール >
ブル爺(79才)
元・文藝春秋の名物編集者。菊池寛の孫。現役時代は“締切破りの鬼”と呼ばれた男。
昭和・平成・令和の三時代を編集現場で生き抜いた、伝説の“締切番長”。
文藝春秋の創業者・菊池寛を祖父に持ち、編集者として祖父の会社に入社。
以来、時代を彩った作家・評論家・ジャーナリストたちを“ネジ伏せながら”育て、無数の名文を世に送り出してきた。
紅茶よりもコーヒー、和菓子よりもバタートースト派。
現在は引退後の“自律神経ケア”に目覚め、京大の森谷敏夫博士に弟子入り(?)し、健康についての学びを開始。
“体も心も編集できるのか”をテーマに、連載を通して問い続けている。
< プロフィール >
森谷敏夫
京都大学 名誉教授
株式会社おせっかい倶楽部 代表取締役
1980年、南カリフォルニア大学大学院博士課程修了(スポーツ医学、Ph.D.)。テキサス大学、テキサス農工大学大学院助教授。テキサス農工大学では医用電子工学の研究者とともにNASAの共同研究に参加、宇宙飛行士の筋疲労や筋肉や体力 低下の予防に関する研究を行った。
1992年より京都大学大学院人間・環境学研究科助教授、2000年から同科教授。2016年3月から京都大学名誉教授。同年4月から中京大学客員教授。
2007年に予防医療の普及推進をめざして立ち上げたNPO法人エビデンスベーストヘルスケア協議会二代目理事長となり、その成果を世の中に広め、具現化していくことを目的として2019年に株式会社おせっかい倶楽部を設立、代表取締役就任。
専門は応用生理学とスポーツ医科学。生活習慣病における運動の重要性を説き有酸素運動を推奨している一方、寝たきり患者や整形外科的に運動ができない人々のための骨格筋電気刺激についても研究を進め、「筋電メディカル®」という新時代のコンセプトを自ら提唱、医学や生活者によるセルフケアの可能性を広げる科学的なアプローチを精力的に行っている。
2024年、「筋電メディカル®」の考え方に基づき、ロコモティブシンドロームやフレイル対策を目標とした新型EMS「筋電メディカル®EMS(MyMed EMS)」を開発。運動生理学に基づき、筋肉がつく過程を、ハードウエア・ソフトウエア両面からの工夫で再現することに成功した。加えて、これまで困難であった体幹部の筋群(インナーマッスル)への刺激手法を開発し、フェムケアにも活用できるEMSとした(特許出願中)。
自律神経活動の研究においても多くの知見があり、自律神経のバランス(交感神経、副交感神経のどちらが優位な状態であるか)に加え、パワー(自律神経の絶対量。老化とともに減少することが知られている)がより重要であることを提言している。この自律神経測定は、通常、心電図解析と同等の精度が必要であるが、2024年、スマートフォンによりほぼ同精度の測定ができる機器の開発に成功した。