【自律神経と健康の基礎知識】ストレスと自律神経|疲れやすさとの関係を知る
ストレスを受けると、心も体も緊張状態におかれるため、交感神経が高まります。交感神経は私たちを活動的に保つための自律神経ですから、本来なら交感神経が高まることは悪いことではないはずです。
ところが、ストレスによって交感神経が高まった場合は、副交感神経との切り替えがうまくいかなくなって、交感神経が優位な状態が延々と続いてしまい、リラックスできなくなり、心身に不調をきたす原因となります。

例えば、ストレスがかかると脳は臨戦態勢に入り、エネルギーを大量に使います。脳のエネルギー源といえば、炭水化物、糖です。その糖がたくさん使われるので、血液中の糖は減り、血糖値は落ちてしまいます。ちなみに血糖値をコントロールしているのも交感神経です。
低血糖に陥ると、手足が震えたり、動悸がはげしくなったり、イライラしたりして、糖尿病の人では失神する危険もあります。そこで、交感神経は食欲抑制より血糖値を上げることを優先させます。そのために、食欲が増進し、「ストレス食い」につながります。

一方、ジョギングなど運動をした時はいかがでしょうか。
この場合も交感神経は大いに刺激され、活発になります。なぜなら、運動をしている時には心臓はドキドキと脈を打ち、呼吸は速まり、筋肉は代謝を促進して、血圧も体温も上昇し、ホルモン分泌も活発になります。交感神経はそれらの動きの全てにかかわり、調整しなければならないので、活性化され、活動レベルもとても高いものになります。
そうして、運動により交感神経が高いレベルまで上がると、運動を終えた時には自然にストンと落ちて、今度は副交感神経のほうが無理なくレベルアップしていくのです。

このように、普通に運動していて交感神経の働きが高まるのと、ストレスのために高まるのとでは同じ「交感神経が優位」ということであっても、実態は全く異なります。ストレスがかかって交感神経が優位になると、副交感神経が後退して働かなくなります。そうなるとますます交感神経が優位になっていきます。副交感神経が後退している状態では、いつまでたってもリラックスできず、ストレスが解消できません。副交感神経が働かないので、仕方なく交感神経が活発な状態になり、悪循環といえる状態になってしまうのです。
この記事を書いた人
森谷敏夫
京都大学 名誉教授
株式会社おせっかい倶楽部 代表取締役
1980年、南カリフォルニア大学大学院博士課程修了(スポーツ医学、Ph.D.)。テキサス大学、テキサス農工大学大学院助教授。テキサス農工大学では医用電子工学の研究者とともにNASAの共同研究に参加、宇宙飛行士の筋疲労や筋肉や体力 低下の予防に関する研究を行った。
1992年より京都大学大学院人間・環境学研究科助教授、2000年から同科教授。2016年3月から京都大学名誉教授。同年4月から中京大学客員教授。
2007年に予防医療の普及推進をめざして立ち上げたNPO法人エビデンスベーストヘルスケア協議会二代目理事長となり、その成果を世の中に広め、具現化していくことを目的として2019年に株式会社おせっかい倶楽部を設立、代表取締役就任。
専門は応用生理学とスポーツ医科学。生活習慣病における運動の重要性を説き有酸素運動を推奨している一方、寝たきり患者や整形外科的に運動ができない人々のための骨格筋電気刺激についても研究を進め、「筋電メディカル®」という新時代のコンセプトを自ら提唱、医学や生活者によるセルフケアの可能性を広げる科学的なアプローチを精力的に行っている。
2024年、「筋電メディカル®」の考え方に基づき、ロコモティブシンドロームやフレイル対策を目標とした新型EMS「筋電メディカル®EMS(MyMed EMS)」を開発。運動生理学に基づき、筋肉がつく過程を、ハードウエア・ソフトウエア両面からの工夫で再現することに成功した。加えて、これまで困難であった体幹部の筋群(インナーマッスル)への刺激手法を開発し、フェムケアにも活用できるEMSとした(特許出願中)。
自律神経活動の研究においても多くの知見があり、自律神経のバランス(交感神経、副交感神経のどちらが優位な状態であるか)に加え、パワー(自律神経の絶対量。老化とともに減少することが知られている)がより重要であることを提言している。この自律神経測定は、通常、心電図解析と同等の精度が必要であるが、2024年、スマートフォンによりほぼ同精度の測定ができる機器の開発に成功した。