【ブル爺の自律神経入門】冷え性はなぜ起こる?|自律神経と体温調節の仕組み

第9回:カラダが冷える?それ、気合いじゃなかったのか


〜 実は神経の働きが関係していた 〜
季節の変わり目は、どうにも体調が崩れがちじゃ。
森谷博士の話じゃが、体温の調節には、交感神経という自律神経が深く関わっておる。体温が下がると、免疫力もガクンと落ちてしまうんじゃ。

なかでも「冷え性」は、交感神経の働きが鈍っていて、体内で熱をつくる「褐色脂肪細胞」がうまく刺激されないことで起こるという。女性の冷え性について、18〜23歳の若い女性たちを対象に調査したところ、手足の冷えを感じる人たちは、エネルギー摂取量が少なかったり、ダイエットの回数が多かったりする傾向があった。そして驚くべきは、彼女たちの交感神経の活動レベルも、そうでない人たちより低かったんじゃ。

寒さに強い人たちもおる。たとえば海女さん、冷たい海の中でも平気だし、北欧の女性観光客が、半袖だったりする!これは、寒さに適応して体内の褐色脂肪細胞が増えているからなんじゃと。
北海道大学の斉藤昌之教授が、低温室で学生たちのエネルギー代謝を測定した実験では、褐色脂肪細胞を持つ学生は、持たない学生に比べて10倍近く多くの熱を生み出しておった。つまり、寒さに強い人たちは、交感神経がこの脂肪細胞を上手に働かせて、体温を保っとるというわけじゃ。
実は、交感神経の受け皿となる「β3アドレナリン受容体」が生まれつき反応しにくい人もおって、日本人を含むアジア人では約4人に1人がおるという。冷えやすいのも無理はない。

そこで「スクワット」じゃ。最近の研究では、筋肉の中に「サルコリピン」という発熱物質があることもわかってきた。筋トレで筋肉を育てることで、冷え対策だけでなく免疫力もアップするという話じゃ。スクワットじゃよ!
< プロフィール >
ブル爺(79才)
元・文藝春秋の名物編集者。菊池寛の孫。現役時代は“締切破りの鬼”と呼ばれた男。
昭和・平成・令和の三時代を編集現場で生き抜いた、伝説の“締切番長”。
文藝春秋の創業者・菊池寛を祖父に持ち、編集者として祖父の会社に入社。
以来、時代を彩った作家・評論家・ジャーナリストたちを“ネジ伏せながら”育て、無数の名文を世に送り出してきた。
紅茶よりもコーヒー、和菓子よりもバタートースト派。
現在は引退後の“自律神経ケア”に目覚め、京大の森谷敏夫博士に弟子入り(?)し、健康についての学びを開始。
“体も心も編集できるのか”をテーマに、連載を通して問い続けている。
< プロフィール >
森谷敏夫
京都大学 名誉教授
株式会社おせっかい倶楽部 代表取締役
1980年、南カリフォルニア大学大学院博士課程修了(スポーツ医学、Ph.D.)。テキサス大学、テキサス農工大学大学院助教授。テキサス農工大学では医用電子工学の研究者とともにNASAの共同研究に参加、宇宙飛行士の筋疲労や筋肉や体力 低下の予防に関する研究を行った。
1992年より京都大学大学院人間・環境学研究科助教授、2000年から同科教授。2016年3月から京都大学名誉教授。同年4月から中京大学客員教授。
2007年に予防医療の普及推進をめざして立ち上げたNPO法人エビデンスベーストヘルスケア協議会二代目理事長となり、その成果を世の中に広め、具現化していくことを目的として2019年に株式会社おせっかい倶楽部を設立、代表取締役就任。
専門は応用生理学とスポーツ医科学。生活習慣病における運動の重要性を説き有酸素運動を推奨している一方、寝たきり患者や整形外科的に運動ができない人々のための骨格筋電気刺激についても研究を進め、「筋電メディカル®」という新時代のコンセプトを自ら提唱、医学や生活者によるセルフケアの可能性を広げる科学的なアプローチを精力的に行っている。
2024年、「筋電メディカル®」の考え方に基づき、ロコモティブシンドロームやフレイル対策を目標とした新型EMS「筋電メディカル®EMS(MyMed EMS)」を開発。運動生理学に基づき、筋肉がつく過程を、ハードウエア・ソフトウエア両面からの工夫で再現することに成功した。加えて、これまで困難であった体幹部の筋群(インナーマッスル)への刺激手法を開発し、フェムケアにも活用できるEMSとした(特許出願中)。
自律神経活動の研究においても多くの知見があり、自律神経のバランス(交感神経、副交感神経のどちらが優位な状態であるか)に加え、パワー(自律神経の絶対量。老化とともに減少することが知られている)がより重要であることを提言している。この自律神経測定は、通常、心電図解析と同等の精度が必要であるが、2024年、スマートフォンによりほぼ同精度の測定ができる機器の開発に成功した。