【ブル爺の自律神経入門】なぜ食べ過ぎてしまう?|食欲と自律神経の関係

第10回:ワシの食欲、年中無休じゃぞ


〜 でもそれ、神経のいたずらかもしれん 〜
4月。新年度を迎えて、歓迎会や花見などご馳走満載で、ワシの胃袋もまるで祭りのようじゃ。食べ過ぎて、気づけば体重が増えとる。でもこれ、単なる意志の問題じゃなくて「神経のいたずら」かもしれんのじゃ。

実は、食欲の調整をしているのは、自律神経の中でも交感神経なのじゃと。食べすぎると、この交感神経が働いて、満腹感を早めに感じさせてくれる仕組みになっておる。森谷博士が言うには、それだけじゃない。交感神経から出るアドレナリンは、脂肪細胞に働きかけて、中性脂肪を分解し、筋肉などで消費されやすい形に変えてくれるとのことじゃ。

だが、運動不足や加齢で交感神経の働きが弱くなると、この「食欲のブレーキ」が効かなくなる。結果として、ついつい食べすぎて太る…という悪循環が生まれる。筋トレをしている人たちの体脂肪が少ないのは、単に筋肉が多くて基礎代謝が高いからだけではなく、交感神経の調子がよくて余計な食欲や脂肪も自動的にうまく調整できているのじゃ。筋トレは、交感神経を鍛える最強の味方なのじゃよ。
体の器官は、すべてつながっておるから、筋トレしよう!と思うのは脳の働きなんじゃと。その信号が神経を伝わって筋肉を動かす。筋肉が動けば、エネルギーを送るために心臓や血管が頑張り、エネルギーをつくるために消化器もフル稼働する。動けば動くほど体全体が目を覚まして、脳も神経も活性化していく。

・・・と、まあこうして「動きのサイクル」が始まれば、筋肉は育ち、脂肪は減り、身軽になって、ますます体が動くようになるというわけじゃ。ゴロゴロ生活をしておると、この交感神経の働きが鈍ってしまい、満腹感が感じにくくなる。つまり「もう食べなくていい」というサインが出にくくなってしまうのじゃな。 新年度のスタートに、ワシからひと言。ダイエットも大事じゃが、それ以上に交感神経を元気にする「運動」を習慣にしてほしいのう。
< プロフィール >
ブル爺(79才)
元・文藝春秋の名物編集者。菊池寛の孫。現役時代は“締切破りの鬼”と呼ばれた男。
昭和・平成・令和の三時代を編集現場で生き抜いた、伝説の“締切番長”。
文藝春秋の創業者・菊池寛を祖父に持ち、編集者として祖父の会社に入社。
以来、時代を彩った作家・評論家・ジャーナリストたちを“ネジ伏せながら”育て、無数の名文を世に送り出してきた。
紅茶よりもコーヒー、和菓子よりもバタートースト派。
現在は引退後の“自律神経ケア”に目覚め、京大の森谷敏夫博士に弟子入り(?)し、健康についての学びを開始。
“体も心も編集できるのか”をテーマに、連載を通して問い続けている。
< プロフィール >
森谷敏夫
京都大学 名誉教授
株式会社おせっかい倶楽部 代表取締役
1980年、南カリフォルニア大学大学院博士課程修了(スポーツ医学、Ph.D.)。テキサス大学、テキサス農工大学大学院助教授。テキサス農工大学では医用電子工学の研究者とともにNASAの共同研究に参加、宇宙飛行士の筋疲労や筋肉や体力 低下の予防に関する研究を行った。
1992年より京都大学大学院人間・環境学研究科助教授、2000年から同科教授。2016年3月から京都大学名誉教授。同年4月から中京大学客員教授。
2007年に予防医療の普及推進をめざして立ち上げたNPO法人エビデンスベーストヘルスケア協議会二代目理事長となり、その成果を世の中に広め、具現化していくことを目的として2019年に株式会社おせっかい倶楽部を設立、代表取締役就任。
専門は応用生理学とスポーツ医科学。生活習慣病における運動の重要性を説き有酸素運動を推奨している一方、寝たきり患者や整形外科的に運動ができない人々のための骨格筋電気刺激についても研究を進め、「筋電メディカル®」という新時代のコンセプトを自ら提唱、医学や生活者によるセルフケアの可能性を広げる科学的なアプローチを精力的に行っている。
2024年、「筋電メディカル®」の考え方に基づき、ロコモティブシンドロームやフレイル対策を目標とした新型EMS「筋電メディカル®EMS(MyMed EMS)」を開発。運動生理学に基づき、筋肉がつく過程を、ハードウエア・ソフトウエア両面からの工夫で再現することに成功した。加えて、これまで困難であった体幹部の筋群(インナーマッスル)への刺激手法を開発し、フェムケアにも活用できるEMSとした(特許出願中)。
自律神経活動の研究においても多くの知見があり、自律神経のバランス(交感神経、副交感神経のどちらが優位な状態であるか)に加え、パワー(自律神経の絶対量。老化とともに減少することが知られている)がより重要であることを提言している。この自律神経測定は、通常、心電図解析と同等の精度が必要であるが、2024年、スマートフォンによりほぼ同精度の測定ができる機器の開発に成功した。