【自律神経と健康の基礎知識】加齢と自律神経|中年以降に太りやすくなる理由を知る
なぜ自律神経の機能が低下して中年以降太ってしまうのでしょうか?
自律神経、特に交感神経の活動が鈍くなるのは、運動不足がほぼ1位の原因だともいわれています。また、中には自律神経失調症といって、自律神経の機能が極端に低下してしまう方がいる。
交感神経で、普通はついた脂肪を燃やすように働いてくれるホルモンが出るのですが、その時にそのホルモンを出す交感神経の働きも弱っているわけですね。

そうすると、冷え性という体験をします。筋肉量が少ないから熱が出にくいというのもあるけれども、交感神経の働きが弱ってくると、鞭打って脂肪を燃やせ!といってアドレナリンを出してミトコンドリアを叩いてるんですけども、そこがなかなか燃やしてくれないので、熱があまり出ない。だから体温も低く、免疫の機能も落ちて風邪もひきやすくなる。するとエネルギーが無駄遣いにできないので、さらに太っていく可能性があるわけですね。
食欲のコントロールもできなくなるし、自分のついた脂肪を鞭打って燃やすということもなかなかできなくなる。そうすると体にどうしても余分に脂肪がつきやすくなる。だから、中年以降の方は太りやすいわけです。

運動不足の人は年中運動不足ですので、階段は見たら必ずエスカレーターとか、例えば、短い距離でもバスがあれば必ず乗るとか、コンビニ行く時でも車を使うなどしてしまう。そうではなく、基本的な毎日の生活をより活動的にすれば、自律神経を少しずつ鍛えることができる。まあ、いわゆる「ちょこまか運動」というのも私はよくお勧めしています。これはNEAT(ニート。Non-Exercise-Activity Thermogenesis)という概念で紹介されていることですが、日常の生活、立ったり座ったりということをより積極的より意欲的にやるということです。立ったり座ったりすると必ず筋肉を使います。その時には交感神経が使われますし、姿勢を変えれば必ずと言っていいほど血圧が変動するので、それに対応して自律神経が血圧の調整をしようとします。つまり、何気ない動作、座ったり立ったりを繰り返すだけでも、実は自律神経を鍛えていることにつながります。
このように日常の生活の中で、自分の自律神経を鍛えるということを優先的に考えられたら、肥満の脱却に対する第一歩になるかもしれません。
この記事を書いた人
森谷敏夫
京都大学 名誉教授
株式会社おせっかい倶楽部 代表取締役
1980年、南カリフォルニア大学大学院博士課程修了(スポーツ医学、Ph.D.)。テキサス大学、テキサス農工大学大学院助教授。テキサス農工大学では医用電子工学の研究者とともにNASAの共同研究に参加、宇宙飛行士の筋疲労や筋肉や体力 低下の予防に関する研究を行った。
1992年より京都大学大学院人間・環境学研究科助教授、2000年から同科教授。2016年3月から京都大学名誉教授。同年4月から中京大学客員教授。
2007年に予防医療の普及推進をめざして立ち上げたNPO法人エビデンスベーストヘルスケア協議会二代目理事長となり、その成果を世の中に広め、具現化していくことを目的として2019年に株式会社おせっかい倶楽部を設立、代表取締役就任。
専門は応用生理学とスポーツ医科学。生活習慣病における運動の重要性を説き有酸素運動を推奨している一方、寝たきり患者や整形外科的に運動ができない人々のための骨格筋電気刺激についても研究を進め、「筋電メディカル®」という新時代のコンセプトを自ら提唱、医学や生活者によるセルフケアの可能性を広げる科学的なアプローチを精力的に行っている。
2024年、「筋電メディカル®」の考え方に基づき、ロコモティブシンドロームやフレイル対策を目標とした新型EMS「筋電メディカル®EMS(MyMed EMS)」を開発。運動生理学に基づき、筋肉がつく過程を、ハードウエア・ソフトウエア両面からの工夫で再現することに成功した。加えて、これまで困難であった体幹部の筋群(インナーマッスル)への刺激手法を開発し、フェムケアにも活用できるEMSとした(特許出願中)。
自律神経活動の研究においても多くの知見があり、自律神経のバランス(交感神経、副交感神経のどちらが優位な状態であるか)に加え、パワー(自律神経の絶対量。老化とともに減少することが知られている)がより重要であることを提言している。この自律神経測定は、通常、心電図解析と同等の精度が必要であるが、2024年、スマートフォンによりほぼ同精度の測定ができる機器の開発に成功した。