Topics

【自律神経と健康の基礎知識】肥満と自律神経|食欲や脂肪燃焼との関係を知る

自律神経と肥満、どういう関係があるのか、お話したいと思います。
自律神経の交感神経という自分を鞭打つ神経、この神経が弱ってくると太るんです、という世界的に有名な学説があります。これは、ジョージ・ブレイというアメリカの肥満学会の会長が唱えた、世界で今最も受け入れられている学説です。

腹囲を測る男性

つまり、人がなぜ太るかというと、食欲とか体についた脂肪を燃焼したりする、そういう満腹中枢が実は、交感神経と同じところにあるんですね。ですから、皆さんが食事をした時にちょっと食べ過ぎて脂肪がたまってきたら、レプチンという遺伝子が出て、それが満腹中枢を刺激して、ああもうお腹がいっぱいだ!ということで食欲を上手くコントロールしてくれるのが、交感神経なんです。
だから交感神経がよく動いている運動中にお腹が空いたという経験はありますか?ないでしょう?そういうことなのです。

木漏れ日の下で伸びをする女性

また、交感神経が元気な時には、アドレナリンとかノルアドレナリンというホルモンが分泌されることがわかっています。これは、体に脂肪がつき始めた時に、自律神経ということは、自動的に自分の脂肪の量を調節してくれるようなシステムがちゃんとあるんです。ですから、交感神経が働いて、こういったホルモンが出ると、全ての脂肪の細胞には、アドレナリンを受け取るセンサー、専門的にはβ3(ベータスリー)アドレナリン受容体というセンサーがあり、そのセンサーにアドレナリンがくっつくと、脂肪を分解、酵素リパーゼというんですけども、これが働いて、皆さんの血液にある中性脂肪とかが分解されて遊離脂肪酸という使われやすい脂肪になります。
これが血液を回り、背中とか脇腹に褐色脂肪細胞というのがあって、これが面白くてですね、同じ脂肪ですが、脂(あぶら)を溜め込む脂肪ではなくて、前述の遊離脂肪酸をミトコンドリアというエネルギーを作る工場で盛んに使って、今の脂肪を熱に変えて炭酸ガスと水にして、自分の脂肪を燃やしてくれるんです。これも交感神経で働くんです。

グラスに注がれる水

つまり、交感神経が元気だったら、食欲のコントロールもうまくいくから、あまり食べなくてもちゃんと満腹感が来る。ちょっと余分についた脂肪は、交感神経が元気だから脂肪分解して燃焼してくれるという、こういうメカニズムがあるから、皆さんの体重というのはうまくコントロールされているわけで、それが自律神経の素晴らしいところなのです。

この記事を書いた人

森谷敏夫
京都大学 名誉教授
株式会社おせっかい倶楽部 代表取締役

1980年、南カリフォルニア大学大学院博士課程修了(スポーツ医学、Ph.D.)。テキサス大学、テキサス農工大学大学院助教授。テキサス農工大学では医用電子工学の研究者とともにNASAの共同研究に参加、宇宙飛行士の筋疲労や筋肉や体力 低下の予防に関する研究を行った。
1992年より京都大学大学院人間・環境学研究科助教授、2000年から同科教授。2016年3月から京都大学名誉教授。同年4月から中京大学客員教授。

2007年に予防医療の普及推進をめざして立ち上げたNPO法人エビデンスベーストヘルスケア協議会二代目理事長となり、その成果を世の中に広め、具現化していくことを目的として2019年に株式会社おせっかい倶楽部を設立、代表取締役就任。

専門は応用生理学とスポーツ医科学。生活習慣病における運動の重要性を説き有酸素運動を推奨している一方、寝たきり患者や整形外科的に運動ができない人々のための骨格筋電気刺激についても研究を進め、「筋電メディカル®」という新時代のコンセプトを自ら提唱、医学や生活者によるセルフケアの可能性を広げる科学的なアプローチを精力的に行っている。

2024年、「筋電メディカル®」の考え方に基づき、ロコモティブシンドロームやフレイル対策を目標とした新型EMS「筋電メディカル®EMS(MyMed EMS)」を開発。運動生理学に基づき、筋肉がつく過程を、ハードウエア・ソフトウエア両面からの工夫で再現することに成功した。加えて、これまで困難であった体幹部の筋群(インナーマッスル)への刺激手法を開発し、フェムケアにも活用できるEMSとした(特許出願中)。

自律神経活動の研究においても多くの知見があり、自律神経のバランス(交感神経、副交感神経のどちらが優位な状態であるか)に加え、パワー(自律神経の絶対量。老化とともに減少することが知られている)がより重要であることを提言している。この自律神経測定は、通常、心電図解析と同等の精度が必要であるが、2024年、スマートフォンによりほぼ同精度の測定ができる機器の開発に成功した。

前の記事へ 次の記事へ
トピックス一覧へ