【自律神経と健康の基礎知識】食欲と自律神経|食べ過ぎを防ぐ仕組みを知る
年末年始、ご馳走を前にがぜん食欲が増してしまって、体重が増えていませんか?
食欲を調節しているのは自律神経なのです! 実は、交感神経は満腹中枢でもあり、ヒトは食べ過ぎると交感神経の働きで満腹感が早く出るようになり、食べ過ぎを自動的に調整しているのです。また、交感神経から出されるアドレナリンは、すべての脂肪細胞に作用するようにできています。

中性脂肪は、交感神経の働きによって遊離脂肪酸に分解され、筋肉などで消費されます。この交感神経が弱ってくると、食欲調節や脂肪の分解が滞ってきて、結果として肥満につながるのです。 筋トレの愛好家の体脂肪が少ないのは、単に筋肉が多くて基礎代謝が高いからだけではなく、食欲と余分な脂肪を自動的に調節してくれる交感神経の働きがよいからです。筋トレは、交感神経を活性化してくれる最も強い味方なのです。

脳、筋肉、神経、心臓循環器系、消化器系など体の器官とそれが持つ機能は、すべて連動しています。動機は人それぞれで、筋トレをやろうと思い立ち、実行に移すのは脳の働きであり、それは運動神経によって伝えられます。筋肉が動けば、エネルギーを送り込もうと心臓循環器系が働き、エネルギーのもとになる栄養を取り込み、代謝しようと消化器系も活発に働くのです。
脳と筋肉は相互に作用しあっているので、筋肉が動けば脳の働きもよくなる。体全体の活性化は自律神経の働きにも効果を及ぼし、体の中に好循環が生まれます。このサイクルが始まれば、筋肉は厚みを増し、余分な脂肪は落ちて身軽に動ける体になるのです。身軽になれば日常の行動は活発になり、トレーニングにも気分よく臨めて、体はよい状態に向かっていき、健康で活動的な生き方に適応していくのです。

逆に長年の運動不足では交感神経の働きが鈍ってきますので、満腹感が得られにくく、食欲調節が難しくなってきます。ダイエットも良いのですが、交感神経を元気にしてくれるのは、やはり運動です。新しい年を迎えたことですし、ぜひ「自律神経を鍛える」ことを年頭の目標にされてはいかがでしょうか。
この記事を書いた人
森谷敏夫
京都大学 名誉教授
株式会社おせっかい倶楽部 代表取締役
1980年、南カリフォルニア大学大学院博士課程修了(スポーツ医学、Ph.D.)。テキサス大学、テキサス農工大学大学院助教授。テキサス農工大学では医用電子工学の研究者とともにNASAの共同研究に参加、宇宙飛行士の筋疲労や筋肉や体力 低下の予防に関する研究を行った。
1992年より京都大学大学院人間・環境学研究科助教授、2000年から同科教授。2016年3月から京都大学名誉教授。同年4月から中京大学客員教授。
2007年に予防医療の普及推進をめざして立ち上げたNPO法人エビデンスベーストヘルスケア協議会二代目理事長となり、その成果を世の中に広め、具現化していくことを目的として2019年に株式会社おせっかい倶楽部を設立、代表取締役就任。
専門は応用生理学とスポーツ医科学。生活習慣病における運動の重要性を説き有酸素運動を推奨している一方、寝たきり患者や整形外科的に運動ができない人々のための骨格筋電気刺激についても研究を進め、「筋電メディカル®」という新時代のコンセプトを自ら提唱、医学や生活者によるセルフケアの可能性を広げる科学的なアプローチを精力的に行っている。
2024年、「筋電メディカル®」の考え方に基づき、ロコモティブシンドロームやフレイル対策を目標とした新型EMS「筋電メディカル®EMS(MyMed EMS)」を開発。運動生理学に基づき、筋肉がつく過程を、ハードウエア・ソフトウエア両面からの工夫で再現することに成功した。加えて、これまで困難であった体幹部の筋群(インナーマッスル)への刺激手法を開発し、フェムケアにも活用できるEMSとした(特許出願中)。
自律神経活動の研究においても多くの知見があり、自律神経のバランス(交感神経、副交感神経のどちらが優位な状態であるか)に加え、パワー(自律神経の絶対量。老化とともに減少することが知られている)がより重要であることを提言している。この自律神経測定は、通常、心電図解析と同等の精度が必要であるが、2024年、スマートフォンによりほぼ同精度の測定ができる機器の開発に成功した。