【自律神経と健康の基礎知識】ウォーキングと自律神経|効果的な歩き方を知る
運動すると自律神経に何が起こるか?
例えば、座っている時には心拍数が70拍の方が、歩き始めるとエネルギーを3倍近く使います。そうすると心臓の動きも速くしないといけない。血液も酸素も今までよりも3倍筋肉に送ってあげないと3倍の速度では歩けないわけです。そうすると交感神経がホルモンを出して心拍数を上げるわけですね。心拍数が上がってくると、それに酸素も必要ですので、血液がたくさん回った時に呼吸もそれに連動してやらないと酸素と血液が結合しないので、心拍数が速くなると呼吸も速くなって、それだけたくさん酸素が血液の中に入っていく、ということになるわけです。

つまり、そういった運動のメリハリ、例えば今3分歩きますと最初は心拍数がどんどん上がっていきますので、その時に交感神経が非常に刺激されます。ところが皆さんがよくやるのは、3分4分5分、10分20分30分、同じペースでウォーキングされる。これが最も自律神経にとってはもったいない運動の仕方なのです。
なぜかというと自律神経ですから、3分も同じ運動をすれば、それに見合うだけの心拍数、それを可能にする呼吸数、酸素のとり方が一定になってしまうので、この時点で自律神経は「ゾンビ」に変わります。何の刺激も入りません。ですから、ここからちょっとギアを上げて、4分5分目に少し速歩を入れたとします。そうすると、今まで以上にエネルギーが必要になるので、ここでまた交感神経がしっかり働くわけです。

その後歩いて3分4分経つとまた同じ状態になるので、実は私から言わせてもらえば、ベンチに座ったほうがいいわけです。座ると今度、今まで高ぶっていた交感神経が、副交感神経によってドウドウと手綱を緩めるようにして心拍数を下げないといけない。速かった呼吸をゆっくりしないといけない。これは副交感神経が動いているからそうなります。
そして3分4分経ったらまた同じことになるので、5分座ったら今度はヨイショと腰を上げてまた歩く。また速足で歩く、ゆっくり歩く、階段を昇る、いろんなことを基本的には3分から5分ぐらいの周期でメリハリをつけてやる運動が、最も自律神経を鍛えてくれるのです。

スマホで自律神経を測定できる方は、そういうメリハリの利いた運動を始めてから1週間2週間、自分で測定されると、自律神経のパワーの値が上がっていくというのが体験できると思いますので、自分のトレーニングの経過状態を把握する意味でも、適度に計測していただくとよいでしょう。
血圧の調整も楽になるし、食欲の調節、脂肪の量の調節もやっている。その肝心要の自律神経が運動で鍛えられることで、活動レベルがワンランクアップするわけです。そうすると、あなたの健康もワンランク、ツーランク、アップするかもしれません。
この記事を書いた人
森谷敏夫
京都大学 名誉教授
株式会社おせっかい倶楽部 代表取締役
1980年、南カリフォルニア大学大学院博士課程修了(スポーツ医学、Ph.D.)。テキサス大学、テキサス農工大学大学院助教授。テキサス農工大学では医用電子工学の研究者とともにNASAの共同研究に参加、宇宙飛行士の筋疲労や筋肉や体力 低下の予防に関する研究を行った。
1992年より京都大学大学院人間・環境学研究科助教授、2000年から同科教授。2016年3月から京都大学名誉教授。同年4月から中京大学客員教授。
2007年に予防医療の普及推進をめざして立ち上げたNPO法人エビデンスベーストヘルスケア協議会二代目理事長となり、その成果を世の中に広め、具現化していくことを目的として2019年に株式会社おせっかい倶楽部を設立、代表取締役就任。
専門は応用生理学とスポーツ医科学。生活習慣病における運動の重要性を説き有酸素運動を推奨している一方、寝たきり患者や整形外科的に運動ができない人々のための骨格筋電気刺激についても研究を進め、「筋電メディカル®」という新時代のコンセプトを自ら提唱、医学や生活者によるセルフケアの可能性を広げる科学的なアプローチを精力的に行っている。
2024年、「筋電メディカル®」の考え方に基づき、ロコモティブシンドロームやフレイル対策を目標とした新型EMS「筋電メディカル®EMS(MyMed EMS)」を開発。運動生理学に基づき、筋肉がつく過程を、ハードウエア・ソフトウエア両面からの工夫で再現することに成功した。加えて、これまで困難であった体幹部の筋群(インナーマッスル)への刺激手法を開発し、フェムケアにも活用できるEMSとした(特許出願中)。
自律神経活動の研究においても多くの知見があり、自律神経のバランス(交感神経、副交感神経のどちらが優位な状態であるか)に加え、パワー(自律神経の絶対量。老化とともに減少することが知られている)がより重要であることを提言している。この自律神経測定は、通常、心電図解析と同等の精度が必要であるが、2024年、スマートフォンによりほぼ同精度の測定ができる機器の開発に成功した。