【自律神経と健康の基礎知識】心拍変動と血圧調節|自律神経パワーの見方を知る

自律神経には、交感神経と副交感神経があります。そして、ほぼすべての臓器に交感神経と副交感神経のネットワークを巡めぐらせています。自律神経は、それで皆さんの健康の維持、いわゆるホメオスタシス(恒常性維持)を自動的に行っています。
その自律神経の機能を知るのに、心臓の拍動がカギになります。
心電図の波形で一番大きな波は、心臓が脈打った時のものです。目視しただけで心臓の脈を打つ間隔がわずかに長くなったり短くなったりしていることがわかります。ここで、間隔の長いところと短いところを含め、一拍一拍全てを心拍数に直します。
心拍数というと、1分間で60拍とか1分間で70拍という表現をするのですが、自律神経の時には一拍一拍の時間間隔を精度よく計測するのです。この時の心拍数は75拍、次の心拍数も75拍だという具合です。たかだか何秒かの間で皆さんの心臓の心拍数は、高い時には83から85拍もあるし、一番低い時には65 拍ということもあります。つまり心臓は一定に脈打っているわけではないのです。

なぜ心拍が揺らぐか。自律神経は血管の細胞の周りに這うように張りめぐらされています。ここから神経伝達物質が出て血管を拡げたり、収縮させたりして、血圧や血流を調節しているのです。
たとえば健常者と糖尿病で神経障害がまだそれほど進行していない人の心電図と血圧を同時に連続測定してみると、健常者は心拍変動が大きく加速、減速しているのがわかります。一方、糖尿病の患者さんで、初期の自律神経障害が少し出始めた人の場合、健常者と比べると、心拍変動の上下の幅が非常に少ないのです。

次に血圧を見てみます。健康な人の一拍一拍の血圧の変化を見てみると、血圧は120前後で、上がったり下がったりする幅が5mmHg 以内です。一方、糖尿病の患者さんは血圧が大きく上下し、15mmHgぐらい平気で動いています。これはなぜかというと、健康な人の自律神経は、脳に行く血流が一定になるように心拍数を大きく上げたり下げたりして、血圧が一定になるように調節しているからなのです。
首の頸動脈のところに圧受容器というセンサーがあって、心臓から出てくる血液の量と酸素の量とpHを全部キャッチしています。その情報を脳に伝達して、自律神経を介して、いま、血流は充分なのか、血圧が高くなりすぎていないのかということをフィードバックしているわけです。
このように、血圧を正常に維持し、上げ下げ幅が大きくならないように調節する自律神経の機能が低下すると、命に関わることになるのです。
この記事を書いた人
森谷敏夫
京都大学 名誉教授
株式会社おせっかい倶楽部 代表取締役
1980年、南カリフォルニア大学大学院博士課程修了(スポーツ医学、Ph.D.)。テキサス大学、テキサス農工大学大学院助教授。テキサス農工大学では医用電子工学の研究者とともにNASAの共同研究に参加、宇宙飛行士の筋疲労や筋肉や体力 低下の予防に関する研究を行った。
1992年より京都大学大学院人間・環境学研究科助教授、2000年から同科教授。2016年3月から京都大学名誉教授。同年4月から中京大学客員教授。
2007年に予防医療の普及推進をめざして立ち上げたNPO法人エビデンスベーストヘルスケア協議会二代目理事長となり、その成果を世の中に広め、具現化していくことを目的として2019年に株式会社おせっかい倶楽部を設立、代表取締役就任。
専門は応用生理学とスポーツ医科学。生活習慣病における運動の重要性を説き有酸素運動を推奨している一方、寝たきり患者や整形外科的に運動ができない人々のための骨格筋電気刺激についても研究を進め、「筋電メディカル®」という新時代のコンセプトを自ら提唱、医学や生活者によるセルフケアの可能性を広げる科学的なアプローチを精力的に行っている。
2024年、「筋電メディカル®」の考え方に基づき、ロコモティブシンドロームやフレイル対策を目標とした新型EMS「筋電メディカル®EMS(MyMed EMS)」を開発。運動生理学に基づき、筋肉がつく過程を、ハードウエア・ソフトウエア両面からの工夫で再現することに成功した。加えて、これまで困難であった体幹部の筋群(インナーマッスル)への刺激手法を開発し、フェムケアにも活用できるEMSとした(特許出願中)。
自律神経活動の研究においても多くの知見があり、自律神経のバランス(交感神経、副交感神経のどちらが優位な状態であるか)に加え、パワー(自律神経の絶対量。老化とともに減少することが知られている)がより重要であることを提言している。この自律神経測定は、通常、心電図解析と同等の精度が必要であるが、2024年、スマートフォンによりほぼ同精度の測定ができる機器の開発に成功した。