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【自律神経と健康の基礎知識】糖尿病と自律神経|身体に起こる変化を知る

血糖値を測定する手元

糖尿病は、神経や目や腎臓などにさまざまな障害を起こすことが知られています。糖尿病網膜症、腎症、(自律)神経障害は三大合併症ですが、これらには血糖異常や高インスリン血症などで障害を受けた血管が主な原因であると考えられます。
また、心臓病や脳卒中など、直接死亡リスクに関係する動脈硬化を引き起こすこともわかってきました。

以前、糖尿病の神経障害の度合いを自律神経活動から検証したことがあります。自律神経は、心拍数を上げたり下げたり、呼吸を浅くしたり深くしたり、眠ったり目覚めたり、みなさんの臓器を全て24時間絶えることなくコントロールしています。
この自律神経は、交感神経と副交感神経という2つの神経網がペアとなって、全身の臓器をくまなく取り巻いています。

交感神経は、主にアクセルの役割をつとめ、一方で副交感神経はブレーキ。2つが必ず対になって役割を分担しているのです。

心電図の波形

ではいったい、その自律神経の動きはどうやって測るのでしょうか? それは、心電図で測定することでわかるようになっています。
心電図は、みなさんも健診の時にご覧になってご存じだと思いますが、皮膚の表面に電極をつけておいて、心臓の電気的な動きを直接測り、波形を記録し続けることで見ることができます。

この波形のリズムは、実は交感神経と副交感神経のコントロールによって起こっているのです。
心臓はずっと動いていて、心拍数というのはこの間隔のことなのです。この心拍数、医師は脈を測って1分間に 60回とか70回などといいますが、工学的にはもっと細かく、1拍ごと正確に瞬時に計測します。
この機械的な計測によると、実は人間の心拍数は決して一定ではなく常に揺らいでいます。この変動のことを「心拍変動」といいます。

血圧を測定する腕

さて、 健常者と糖尿病患者の心電図と血圧を見比べると、健常者の心拍は大きく変動していますが、これは呼吸によって血圧が逐次変動するため、その血圧を一定に保つよう自律神経で心拍数を調節しているからです。特に、脳の血圧が安定することは生命維持に大変重要なので、細かく心拍がコントロールされているのです。

ところが、糖尿病患者の心電図を見ると、健常者に比べほとんど揺らぎがなく、まるでメトロノームのように正確に動いています。一方で血圧は大きく上がったり下がったりしています。本来なら、健常者のように血圧が平らに安定していることこそがたいへん重要なのですが、糖尿病による自律神経の障害があるので心拍変動が少なく、血圧が大きく変動してしまうのです。

ハートと心電図のイメージ

実は、このように、心拍変動の揺らぎが大きいとか小さいとかいうのは何を意味しているかというと、自律神経の強さ、「パワー」をあらわしています。交感神経と副交感神経については、そのバランスばかり気にするきらいがあるのですが、「パワー」を見ないと意味がないのです。

揺れ幅がない、つまり「パワー」がないということは、決してよいことではありません。自律神経の働きが弱く心臓のリズムが一定になると、不整脈や突然死のリスクが高くなってしまいます。

機械ならば、正確にリズムを刻むほうがよいのですが、心臓は大きく揺らいでいるほうが元気であり、自律神経の「パワー」はとても大切なのです。

この記事を書いた人

森谷敏夫
京都大学 名誉教授
株式会社おせっかい倶楽部 代表取締役

1980年、南カリフォルニア大学大学院博士課程修了(スポーツ医学、Ph.D.)。テキサス大学、テキサス農工大学大学院助教授。テキサス農工大学では医用電子工学の研究者とともにNASAの共同研究に参加、宇宙飛行士の筋疲労や筋肉や体力 低下の予防に関する研究を行った。
1992年より京都大学大学院人間・環境学研究科助教授、2000年から同科教授。2016年3月から京都大学名誉教授。同年4月から中京大学客員教授。

2007年に予防医療の普及推進をめざして立ち上げたNPO法人エビデンスベーストヘルスケア協議会二代目理事長となり、その成果を世の中に広め、具現化していくことを目的として2019年に株式会社おせっかい倶楽部を設立、代表取締役就任。

専門は応用生理学とスポーツ医科学。生活習慣病における運動の重要性を説き有酸素運動を推奨している一方、寝たきり患者や整形外科的に運動ができない人々のための骨格筋電気刺激についても研究を進め、「筋電メディカル®」という新時代のコンセプトを自ら提唱、医学や生活者によるセルフケアの可能性を広げる科学的なアプローチを精力的に行っている。

2024年、「筋電メディカル®」の考え方に基づき、ロコモティブシンドロームやフレイル対策を目標とした新型EMS「筋電メディカル®EMS(MyMed EMS)」を開発。運動生理学に基づき、筋肉がつく過程を、ハードウエア・ソフトウエア両面からの工夫で再現することに成功した。加えて、これまで困難であった体幹部の筋群(インナーマッスル)への刺激手法を開発し、フェムケアにも活用できるEMSとした(特許出願中)。

自律神経活動の研究においても多くの知見があり、自律神経のバランス(交感神経、副交感神経のどちらが優位な状態であるか)に加え、パワー(自律神経の絶対量。老化とともに減少することが知られている)がより重要であることを提言している。この自律神経測定は、通常、心電図解析と同等の精度が必要であるが、2024年、スマートフォンによりほぼ同精度の測定ができる機器の開発に成功した。

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