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【自律神経と健康の基礎知識】更年期と自律神経|女性の体調変化を知る

更年期になりますと、いろいろ悩ましいことも起こります。
更年期女性における自律神経機能とほてり、のぼせ、発汗などのいわゆる不定愁訴について調査研究したことがあります。
心拍変動パワースペクトル解析という方法を用いて、これらの自律神経活動の指標と女性ホルモンであるエストロゲンのレベルとの関係、および血管運動症状(ほてり、発汗)との関連を評価しました。閉経前後の女性にアンケートを実施し、回答していただきました。

アンケート用紙に記入する手元

その結果、総自律神経活動と低周波成分(主に交感神経活動)の値は、ほてりグループで有意に低下していました。また、総自律神経活動と交感神経活動の値は、発汗グループで有意に低下していました。
更に総自律神経活動、交感神経活動、副交感神経活動の値は、ほてりまたは発汗のいずれか、ほてりと発汗の両方のグループは、ほてりも発汗もないグループと比較して有意に低いことが明らかになりました。我々の調査結果は、自律神経活動評価が血管運動症状(ほてり、発汗)の評価に役立つ可能性が非常に高いことを示唆しています。

ほてりを感じる女性

自律神経と更年期については、次のような研究結果も出ています。
東京医科歯科大学との共同研究で更年期外来を受診した症例のうち、糖尿病や高血圧などの合併症を有する症例を除外した243名の自律神経活動を評価する機会がありました。全く健康な人で、まだお薬も投薬もしていない人の自律神経を解析して、その243名の平均値、中央値から自律神経の機能が低い人と高い人の2つのグループに分けました。

AとBの文字を持つ手

そうすると自律神経の機能の低い群のBMI(体格指数)は高い群よりも統計的にも高値を示しました。同様に自律神経が低い群は体脂肪率も高くなっていました。また、自律神経が低下している群は、総コレステロールが高く、悪玉といわれるLDLコレステロールも中性脂肪も高くなっていました。つまり、更年期の女性では自律神経活動のレベルが体重、体脂肪率、血液の脂質にも大きな影響を持っていることが明らかになったのです。

女性マークの錠剤と薬瓶

また、交感神経活動はあるが副交感神経がほとんど活動していない、更年期以降の女性30名に、完全監視のもと、ウォーミングアップと筋トレ、有酸素運動、クーリングダウン、全てで1時間の総合運動プログラムを週に5日12週間やってもらいました。このような状況の女性でも、5週間にわたり運動、筋トレをやっていただくと、最初に回復するのが副交感神経です。

アメリカのスポーツ医学学会で発表した我々の論文で、副交感神経というのは、運動すると最初に回復する可能性が強いことを報告しました。副交感神経の活動が回復した後もずっと運動を続けてもらうと、12週目になるとなんと交感神経も副交感神経もグンとレベルアップします。このように、運動により自律神経の機能が戻れば、体重調節はその後も比較的容易にできるわけです。

この記事を書いた人

森谷敏夫
京都大学 名誉教授
株式会社おせっかい倶楽部 代表取締役

1980年、南カリフォルニア大学大学院博士課程修了(スポーツ医学、Ph.D.)。テキサス大学、テキサス農工大学大学院助教授。テキサス農工大学では医用電子工学の研究者とともにNASAの共同研究に参加、宇宙飛行士の筋疲労や筋肉や体力 低下の予防に関する研究を行った。
1992年より京都大学大学院人間・環境学研究科助教授、2000年から同科教授。2016年3月から京都大学名誉教授。同年4月から中京大学客員教授。

2007年に予防医療の普及推進をめざして立ち上げたNPO法人エビデンスベーストヘルスケア協議会二代目理事長となり、その成果を世の中に広め、具現化していくことを目的として2019年に株式会社おせっかい倶楽部を設立、代表取締役就任。

専門は応用生理学とスポーツ医科学。生活習慣病における運動の重要性を説き有酸素運動を推奨している一方、寝たきり患者や整形外科的に運動ができない人々のための骨格筋電気刺激についても研究を進め、「筋電メディカル®」という新時代のコンセプトを自ら提唱、医学や生活者によるセルフケアの可能性を広げる科学的なアプローチを精力的に行っている。

2024年、「筋電メディカル®」の考え方に基づき、ロコモティブシンドロームやフレイル対策を目標とした新型EMS「筋電メディカル®EMS(MyMed EMS)」を開発。運動生理学に基づき、筋肉がつく過程を、ハードウエア・ソフトウエア両面からの工夫で再現することに成功した。加えて、これまで困難であった体幹部の筋群(インナーマッスル)への刺激手法を開発し、フェムケアにも活用できるEMSとした(特許出願中)。

自律神経活動の研究においても多くの知見があり、自律神経のバランス(交感神経、副交感神経のどちらが優位な状態であるか)に加え、パワー(自律神経の絶対量。老化とともに減少することが知られている)がより重要であることを提言している。この自律神経測定は、通常、心電図解析と同等の精度が必要であるが、2024年、スマートフォンによりほぼ同精度の測定ができる機器の開発に成功した。

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