【自律神経と健康の基礎知識】運動後の食事と自律神経|食欲コントロールを知る
食欲を調節しているのは自律神経であり、とくに交感神経は満腹中枢でもあることはお話しました。運動している時にはお腹がすいた感じがないのは、交感神経が食欲を抑えているからなのです。ちょっと息が弾むような運動や筋トレなどは、交感神経の機能を維持改善してくれます。また、運動してから45分間程度は腸管から食欲を抑えるホルモンも出るので、運動後に食事をすると早く満腹感が得られ、食べ過ぎを予防できます。

せっかくですので、この際、運動とあわせてぜひ筋肉を育てましょう。それには、筋肉を構成する栄義素、タンパク質をしっかりとりましょう。タンパク質は一日あたり体重1kgに対して約1gとるとよいとされています。60kgの女性であれば60gです。筋肉の合成には一食あたり約20gのタンパク質が必要だといわれていますので、朝昼晩、毎食きちんとタンパク質をとりましょう。

さらに意識して摂取したいのが、運動直後のタンパク質。運動後は成長ホルモンが出るため、筋肉の合成を効率よく行うことができます。高齢になってもその利点は変わらないので、毎日の習慣とするのがよいでしょう。それも良質のタンパク質、例えば、赤身の肉、ササミや豆腐など、油の少ないタンパク質は、前述の自律神経を介する食欲調節にも有効です。こうしたタンパク質を少し多めにとる食事は、腸管から分泌される食欲を抑制するペプチドYYやGLP_1というホルモンの分泌を促します。同時に、食欲を増進する胃から分泌されるグレリンというホルモンを抑制するのです。油の少ないタンパク質で、もうお腹いっぱいの状態になるんですね。
脂っこいものを食べたら満腹感が得られると思っている人が多いのですが、とんでもない話です。グレリンを抑制するのはタンパク質と炭水化物、これらはほぼ同等の抑制力を持っています。炭水化物も抜いてはいけないし、タンパク質もしっかりとってください。

ちなみに、高脂肪食は逆に食欲抑制が利かないことも覚えておいてくださいね!
この記事を書いた人
森谷敏夫
京都大学 名誉教授
株式会社おせっかい倶楽部 代表取締役
1980年、南カリフォルニア大学大学院博士課程修了(スポーツ医学、Ph.D.)。テキサス大学、テキサス農工大学大学院助教授。テキサス農工大学では医用電子工学の研究者とともにNASAの共同研究に参加、宇宙飛行士の筋疲労や筋肉や体力 低下の予防に関する研究を行った。
1992年より京都大学大学院人間・環境学研究科助教授、2000年から同科教授。2016年3月から京都大学名誉教授。同年4月から中京大学客員教授。
2007年に予防医療の普及推進をめざして立ち上げたNPO法人エビデンスベーストヘルスケア協議会二代目理事長となり、その成果を世の中に広め、具現化していくことを目的として2019年に株式会社おせっかい倶楽部を設立、代表取締役就任。
専門は応用生理学とスポーツ医科学。生活習慣病における運動の重要性を説き有酸素運動を推奨している一方、寝たきり患者や整形外科的に運動ができない人々のための骨格筋電気刺激についても研究を進め、「筋電メディカル®」という新時代のコンセプトを自ら提唱、医学や生活者によるセルフケアの可能性を広げる科学的なアプローチを精力的に行っている。
2024年、「筋電メディカル®」の考え方に基づき、ロコモティブシンドロームやフレイル対策を目標とした新型EMS「筋電メディカル®EMS(MyMed EMS)」を開発。運動生理学に基づき、筋肉がつく過程を、ハードウエア・ソフトウエア両面からの工夫で再現することに成功した。加えて、これまで困難であった体幹部の筋群(インナーマッスル)への刺激手法を開発し、フェムケアにも活用できるEMSとした(特許出願中)。
自律神経活動の研究においても多くの知見があり、自律神経のバランス(交感神経、副交感神経のどちらが優位な状態であるか)に加え、パワー(自律神経の絶対量。老化とともに減少することが知られている)がより重要であることを提言している。この自律神経測定は、通常、心電図解析と同等の精度が必要であるが、2024年、スマートフォンによりほぼ同精度の測定ができる機器の開発に成功した。