【自律神経と健康の基礎知識】冷えと自律神経|体温調節の仕組みを知る
季節の変わり目は体調が悪くなりやすいですね。とくに最近は朝夕もぐっと冷えてきました。風邪をひきやすくなる頃ですので、お気をつけください。
さて、自律神経の一種である交感神経は、体温調節に対し大切な働きを持っています。体温が低いと免疫能が10%以上も低下するといわれています。冷え性は交感神経の働きが弱く、体熱を産生してくれる褐色脂肪細胞への刺激が滞る場合が多く見られます。

例えば、若年女性の約半数に四肢などに冷え感の自覚があるとの報告もあります。そこで、エネルギー摂取量やダイエット回数が若年女性の冷え感に及ぼす影響について、交感神経活動の影響も併せて検討しました。
対象者は18~23才の女性144名で、食事調査と質問紙調査、および体組成、体温、自律神経活動の測定を行いました。冷え感は「夏にも手や足に冷えがある」「冬、暖かい部屋に入っても手足がなかなか温まらない」について、それぞれ1点(全く感じない)~5点(非常に強く感じる)で答えてもらい、結果を比較しました。
体温は2群で差がありませんでしたが、冷え高得点群は低得点群に比べて、エネルギーや炭水化物摂取量が少なく、ダイエット回数が多く、交感神経活動(LF)と体温・熱産生に関与する交感神経活動(VLF)が低下していることがわかりました。

一方、海女さんは寒い海の中に入って貝などを取ってきます。また、北欧の方たちが観光に来られますが、半袖です。彼らは寒い環境にさらされているので、体温を調節する褐色脂肪細胞が増加しているのです。
ヒトの褐色細胞の存在と機能を見える化に成功したのは北海道大学の斉藤昌之教授で、褐色脂肪細胞がある学生とない学生たちを低温室に入れてエネルギー代謝を測定した結果、褐色脂肪のない学生では常温時より約42kcal増えただけでしたが、褐色脂肪細胞のある学生では平均410kcalと劇的にエネルギー消費が増加して体温を維持していたのです。海女さんや北欧の人々はこの褐色脂肪細胞が多く、交感神経でこれらの細胞を活性化してエネルギーを使うことによって体温を上げているのです。

日頃から鍛えている海女さんはともかく、交感神経のアドレナリンを受け取るセンサー、β3アドレナリン受容体が遺伝的に反応しづらい人が、日本人を含めアジア民族の約25%を占めます。部屋にこもりがちなこの時期には足腰が弱くなってくるので、代謝・免疫力アップもかねてスクワットがおすすめです。最近の知見で、筋肉細胞の中にサルコリピンという発熱物質が存在することがわかりました。スクワットなど筋トレで筋肉をしっかり鍛えて維持することは、免疫と冷え性にも有効なのです。
この記事を書いた人
森谷敏夫
京都大学 名誉教授
株式会社おせっかい倶楽部 代表取締役
1980年、南カリフォルニア大学大学院博士課程修了(スポーツ医学、Ph.D.)。テキサス大学、テキサス農工大学大学院助教授。テキサス農工大学では医用電子工学の研究者とともにNASAの共同研究に参加、宇宙飛行士の筋疲労や筋肉や体力 低下の予防に関する研究を行った。
1992年より京都大学大学院人間・環境学研究科助教授、2000年から同科教授。2016年3月から京都大学名誉教授。同年4月から中京大学客員教授。
2007年に予防医療の普及推進をめざして立ち上げたNPO法人エビデンスベーストヘルスケア協議会二代目理事長となり、その成果を世の中に広め、具現化していくことを目的として2019年に株式会社おせっかい倶楽部を設立、代表取締役就任。
専門は応用生理学とスポーツ医科学。生活習慣病における運動の重要性を説き有酸素運動を推奨している一方、寝たきり患者や整形外科的に運動ができない人々のための骨格筋電気刺激についても研究を進め、「筋電メディカル®」という新時代のコンセプトを自ら提唱、医学や生活者によるセルフケアの可能性を広げる科学的なアプローチを精力的に行っている。
2024年、「筋電メディカル®」の考え方に基づき、ロコモティブシンドロームやフレイル対策を目標とした新型EMS「筋電メディカル®EMS(MyMed EMS)」を開発。運動生理学に基づき、筋肉がつく過程を、ハードウエア・ソフトウエア両面からの工夫で再現することに成功した。加えて、これまで困難であった体幹部の筋群(インナーマッスル)への刺激手法を開発し、フェムケアにも活用できるEMSとした(特許出願中)。
自律神経活動の研究においても多くの知見があり、自律神経のバランス(交感神経、副交感神経のどちらが優位な状態であるか)に加え、パワー(自律神経の絶対量。老化とともに減少することが知られている)がより重要であることを提言している。この自律神経測定は、通常、心電図解析と同等の精度が必要であるが、2024年、スマートフォンによりほぼ同精度の測定ができる機器の開発に成功した。