【ブル爺の自律神経入門】いつものウォーキングでは足りない?|自律神経を刺激する歩き方

第6回:運動すると、ワシの神経はどうなる?


〜驚きの“鍛え効果”を聞いてみた~
運動で、神経って鍛えられるのか?
京大名誉教授森谷敏夫の「驚きの“鍛え効果”」なんてワシにわかるかな?
森谷博士曰く……最初から脱線するけど「曰く」は「いわく」と読まず「のたまわく」と読んでくださいね、偉い方なんです、森谷博士は!で、このブル爺が直接博士から聞いた話ですんで。

「『運動しなさいよ』とか『歩きなさい!』と言われても、年齢に関係なくなかなか皆ができるわけじゃないでしょう。中にはウォーキングが好きな方もいるけれど、みんながやるとは考えにくいですよね!でも自律神経が運動で鍛えられると聞いたら、ちょっと耳を傾けたくなるんじゃないかな。
たとえば、椅子に座ってるときの心拍数は70くらい。でも、歩き出したとたん、エネルギー消費が3倍になる。そうすると心臓も呼吸もギアを上げなきゃ追いつかないから、そこで交感神経が反応すると、副腎からアドレナリンなどのホルモンが分泌されて、心拍数が自然と上がってくるんですね。心拍数が上がれば、酸素も必要になるから、呼吸も自然と速くなる。ヒトの身体って、よくできているでしょ?
問題は、ここからなのです。よく見かけるウォーキングをしている方の多くは、ずーっと同じペースで20分も30分って歩いてるでしょ? あれ、自律神経的には、すごくもったいないんですよ。
自律神経のほうが慣れちゃって、刺激が入らないんですね。言うなれば「ゾンビ」状態。呼吸も心拍も落ち着いて、神経は惰性で動いているだけになる。
本当はね、まず3分ほど普通に歩く。そしたら、交感神経が『よし、オレの出番だ』と動き出す。次に、ちょっと速足にしてみる。すると神経がさらに活性化する。その後、ベンチにでも腰掛けてひと休みすると今度は副交感神経が出てきて、『落ち着け』と整えてくれる。
この『交感神経と副交感神経のリレー』が、自律神経を鍛える一番のコツなんだよ、ブル爺くん。
3〜5分ごとに、歩く、スピードを上げる、座る、を繰り返す。階段を使ったり、ちょっと坂道を入れてみたり、いろいろ工夫するとなお良いと思う。
最近は、スマホで自律神経を測れるアプリもあるから、数値で変化を見てみるのも面白いと思うね。1週間もすれば『神経の鍛えられてる感』が出てくるはず。
自律神経が整えば、血圧、食欲、脂肪のコントロールだってお手のもの。体の『司令塔』がしっかりしてくれば、ブル爺の健康もワンランク…いや、ツーランクはアップするかも知れませんね」

森谷博士にいいことを聞いたので「今まで駅からの帰り道、旨そうなケーキ屋を横目に我慢していましたが、椅子に座れれば食べても……」と言ったら博士が、「何を聞いていたんだ、ブル爺!!」だって!
< プロフィール >
ブル爺(79才)
元・文藝春秋の名物編集者。菊池寛の孫。現役時代は“締切破りの鬼”と呼ばれた男。
昭和・平成・令和の三時代を編集現場で生き抜いた、伝説の“締切番長”。
文藝春秋の創業者・菊池寛を祖父に持ち、編集者として祖父の会社に入社。
以来、時代を彩った作家・評論家・ジャーナリストたちを“ネジ伏せながら”育て、無数の名文を世に送り出してきた。
紅茶よりもコーヒー、和菓子よりもバタートースト派。
現在は引退後の“自律神経ケア”に目覚め、京大の森谷敏夫博士に弟子入り(?)し、健康についての学びを開始。
“体も心も編集できるのか”をテーマに、連載を通して問い続けている。
< プロフィール >
森谷敏夫
京都大学 名誉教授
株式会社おせっかい倶楽部 代表取締役
1980年、南カリフォルニア大学大学院博士課程修了(スポーツ医学、Ph.D.)。テキサス大学、テキサス農工大学大学院助教授。テキサス農工大学では医用電子工学の研究者とともにNASAの共同研究に参加、宇宙飛行士の筋疲労や筋肉や体力 低下の予防に関する研究を行った。
1992年より京都大学大学院人間・環境学研究科助教授、2000年から同科教授。2016年3月から京都大学名誉教授。同年4月から中京大学客員教授。
2007年に予防医療の普及推進をめざして立ち上げたNPO法人エビデンスベーストヘルスケア協議会二代目理事長となり、その成果を世の中に広め、具現化していくことを目的として2019年に株式会社おせっかい倶楽部を設立、代表取締役就任。
専門は応用生理学とスポーツ医科学。生活習慣病における運動の重要性を説き有酸素運動を推奨している一方、寝たきり患者や整形外科的に運動ができない人々のための骨格筋電気刺激についても研究を進め、「筋電メディカル®」という新時代のコンセプトを自ら提唱、医学や生活者によるセルフケアの可能性を広げる科学的なアプローチを精力的に行っている。
2024年、「筋電メディカル®」の考え方に基づき、ロコモティブシンドロームやフレイル対策を目標とした新型EMS「筋電メディカル®EMS(MyMed EMS)」を開発。運動生理学に基づき、筋肉がつく過程を、ハードウエア・ソフトウエア両面からの工夫で再現することに成功した。加えて、これまで困難であった体幹部の筋群(インナーマッスル)への刺激手法を開発し、フェムケアにも活用できるEMSとした(特許出願中)。
自律神経活動の研究においても多くの知見があり、自律神経のバランス(交感神経、副交感神経のどちらが優位な状態であるか)に加え、パワー(自律神経の絶対量。老化とともに減少することが知られている)がより重要であることを提言している。この自律神経測定は、通常、心電図解析と同等の精度が必要であるが、2024年、スマートフォンによりほぼ同精度の測定ができる機器の開発に成功した。