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【自律神経と健康の基礎知識】運動と認知機能|脳に良いとされる理由を知る

アミロイドβという物質が脳に蓄積して認知症になるという話はしました。そして、世の中では運動すると認知症の予防になるということで、皆さんは、有酸素運動として歩いたりジョギングしたりしておられます。

公園でウォーキングする男女

なぜ運動がよいのかというと、筋肉をある程度しっかり使って歩いている時に、実は筋肉の一部のタンパク質が分解され、それがアイリシンという物質になります。このアイリシンというのが、皆さんの脳の、学習や記憶を司る海馬というところに入り込んでいって、その中で脳由来神経栄養因子、英語ではBDNF(Brain-derived neurotrophic factor)という遺伝子に変換にされます。これが皆さんの海馬の神経細胞に働きかけて、学習能力をアップしたり、記憶力をアップしたり、あるいは新しく神経細胞まで作ってくれるという、本当に脳にとってありがたい遺伝子になるのです。これが見つかったのは2002年頃なんですね。

水しぶき

それからさらに話が進んで、どうも運動をしている人のほうが圧倒的に認知症になる人が少ないということがわかり、理由は運動をしていてBDNFが増えると、それが脳に入り込んで、相棒のチロシンキナーゼB受容体と結合します。そうするとその中でいろいろな化学反応が起こって、その結果としてアミロイドβというのを完全に無力化し、毒素を取り除いてくれるような働きをする、ということがわかりました。

もっと最近の研究では、ゆっくり歩いている時よりは、ちょっときつめに乳酸というのが出るぐらいの運動をした時のほうが、このアミロイドβがより多く取り除かれる、ということがわかっています。アメリカでは、この乳酸というのは今、脳神経系の疾患の治療薬になりえるといわれていて、“Exercise as medicine” つまり日本語でいうと乳酸は「運動薬」になりえる。特に脳神経系アルツハイマーとか認知症に関しての素晴らしい薬になる、というのが最近の知見です。

ウォーキングする男女

ぜひ、きつめの運動をちょっとだけ取り入れてください。長くやるとたぶん疲れてしまうと思いますので、例えばウォーキングをされているのであれば、10分歩いたら3分ぐらいは全速力で歩くつもりでやって、あと3分、まあ1分でもよいと思いますが、ゆっくり歩く。そういうのを何セットか、3セットぐらいされますと、認知症の予防になります。

この記事を書いた人

森谷敏夫
京都大学 名誉教授
株式会社おせっかい倶楽部 代表取締役

1980年、南カリフォルニア大学大学院博士課程修了(スポーツ医学、Ph.D.)。テキサス大学、テキサス農工大学大学院助教授。テキサス農工大学では医用電子工学の研究者とともにNASAの共同研究に参加、宇宙飛行士の筋疲労や筋肉や体力 低下の予防に関する研究を行った。
1992年より京都大学大学院人間・環境学研究科助教授、2000年から同科教授。2016年3月から京都大学名誉教授。同年4月から中京大学客員教授。

2007年に予防医療の普及推進をめざして立ち上げたNPO法人エビデンスベーストヘルスケア協議会二代目理事長となり、その成果を世の中に広め、具現化していくことを目的として2019年に株式会社おせっかい倶楽部を設立、代表取締役就任。

専門は応用生理学とスポーツ医科学。生活習慣病における運動の重要性を説き有酸素運動を推奨している一方、寝たきり患者や整形外科的に運動ができない人々のための骨格筋電気刺激についても研究を進め、「筋電メディカル®」という新時代のコンセプトを自ら提唱、医学や生活者によるセルフケアの可能性を広げる科学的なアプローチを精力的に行っている。

2024年、「筋電メディカル®」の考え方に基づき、ロコモティブシンドロームやフレイル対策を目標とした新型EMS「筋電メディカル®EMS(MyMed EMS)」を開発。運動生理学に基づき、筋肉がつく過程を、ハードウエア・ソフトウエア両面からの工夫で再現することに成功した。加えて、これまで困難であった体幹部の筋群(インナーマッスル)への刺激手法を開発し、フェムケアにも活用できるEMSとした(特許出願中)。

自律神経活動の研究においても多くの知見があり、自律神経のバランス(交感神経、副交感神経のどちらが優位な状態であるか)に加え、パワー(自律神経の絶対量。老化とともに減少することが知られている)がより重要であることを提言している。この自律神経測定は、通常、心電図解析と同等の精度が必要であるが、2024年、スマートフォンによりほぼ同精度の測定ができる機器の開発に成功した。

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